やっちゃっていいですか?
花屋で働こう!
そう思った瞬間、棚の奥から履歴書をひっぱりだして、大急ぎで書き始めました。
当たり前ですが、今思いついたので、面接アポなどはとっていません。
でも、生きる意味のわからなくなったわたしは、何かに追いかけられるように、必死に履歴書を埋めていました。
書き終わり次第、お店に突撃訪問予定です。
どこの花屋で働くかは決めてました。
家から車で5分くらいのところにある、こじんまりとした花屋です。
以前、店の外から見えるグリーンや花がきれいで、誘われるようにして訪ねたことがありました。
たしか、初めて来店した日、わたしは人生に迷っちゃってて脳内八方塞がりで、癒されたくて、花でも飾ってみようかしらと思い、
「あのぅ、これに活けたいんですけど、おススメありますか?」と変な袋を持って行きました。
「そうですねぇ…」と女性店員が、数本花を選んでくれたので、それを家に持ち帰り、活けてみたものの、うまく飾れなくてまた落ち込んだ覚えがあります。
でも、そんな優しい店員さんのいるお店にまた行きたいなと思い、祖母に渡すフラワーアレンジメントを注文しに再び訪ねました。
わたしの祖母は、年の割に、新しいものに興味を示してくれるハイカラな女性です。
あそこの花屋なら、そんな注文にも応えてくれそうだと思いました。
注文のとき、そこの店主が言いました。
「おばあさまは、少し変わったものがお好きなんですね。やっちゃっていいですか?やっちゃいますよ?」
ほぼ初対面のお客さんに
「やっちゃっていいですか?」はどうしたものかと思いましたが、それがわたしのここで働らく決めてとなりました。
以前に会った女性は、この店主の奥さんで、夫婦でこの花屋を営んでいるのだということがわかりました。
少し変わった、勢いのある店主と
おっとりとした、優しそうな奥さん
この2人の織りなす雰囲気と、その店の全体の空気感に一気に飲み込まれました。
とか、回想しながら履歴書を書き上げ、それを握りしめて、自転車にまたがり家を出ました。