鏡にうつる、今日は雨。
看護師として、訪問入浴のしごとをしていました。
訪問入浴のしごとは、ワンボックスのバンに携帯用のバスタブや給水機などの機材をのせ、1日中利用者さんの家を回ります。
約束の時間に自宅に出向きし、利用者さんの介護度にあわせて入浴をおてつだいします。
スタッフは看護師一名(わたし)、介護士を含めた3人です。
お風呂を入れるというケアは、とっても重労働なのだと知りました。
慣れないわたしは、くたくたです。
何度か同じお家にお邪魔する機会があり、そこで出会った利用者さんの一言が今でも心に残っています。
「今日は雨やね。いつもこうして見てるの。」
その女性は、片方の腕以外はじぶんでからだを動かすことができません。
その手で、鏡をもち、じぶんより後方にある窓を映しました。
「雨で濡れてる部分が光る。だから雨。」
彼女はそう呟きます。
鏡に映る軒の、光の反射具合を見て、今日の天気をはかるのです。
心がキュッとしました。
わたしが感じてる
今日の雨と
この人が感じてる
今日の雨は
とっても意味が違う。
この人はこれから何年もここで
こうやって、毎日窓をみる。
濡れることもなければ寒いこともない
それがどんな気持ちか。
わたしがいかに恵まれているか
忘れていました。